電気工事における安全対策は、感電などの事故を防ぐために極めて重要です。設備の点検・作業内容の確認・情報の共有などの基本的な対策に加え、作業員の服装や使用する工具についても注意が必要です。
この記事では、電気工事を行う際の電気工事士の適切な服装と工具、さらに電気による事故を防ぐための具体的な対策を紹介します。
安全面から考える電気工事に適切な服装と工具
電気工事を安全に行うためには、適切な服装や工具の選択が不可欠です。
ここからは、安全面を考慮した服装と工具の選び方や注意点などを解説します。
服装による安全対策
電気工事では、安全のために「長袖の作業着」「保護ヘルメット」「絶縁靴」「絶縁手袋」を装備します。
長袖の作業着は、電気との接触や飛散物によるケガのリスクを減らし、肌を保護する役割があります。汗をかいた状態での感電リスクを減らすためにも、長袖の着用が必要です。夏場は暑いというデメリットがあるものの、最近では快適に作業できる冷感素材の作業着なども販売されています。
保護ヘルメット(電気工事用ヘルメット)は、絶縁機能を備えた、通気口のない形状が特徴です。長袖同様に暑さを感じるシーンも多いものの、最近は快適性を考慮した通気性の良い素材が使われている製品もあり、デメリットは克服されつつあります。
絶縁靴と絶縁手袋は、身体への通電を防ぐために欠かせないアイテムです。通常の手袋や靴ではなく、必ず電気工事専用の製品を選び、身体を守りましょう。
さらに、電気工事時には金属製のベルトやライターなど、通電のリスクを高める可能性のあるアイテムの使用は避けるべきです。
電気工事には危険が伴うものの、適切な服装を選べばそのリスクは低減できます。現場全体の安全性を高めるためには、作業員同士で互いの服装に気を配ることが大切です。
工具による安全対策
電気工事において工具は、安全を確保するうえで重要な役割を担っています。特に「電気工事専用の工具の使用」と「工具の定期的なメンテナンス」が重要です。
電気工事専用の工具の使用は、安全対策の基本中の基本です。具体的には、絶縁ドライバー・電気の通らないゴム製の工具・デジタルマルチメーター(テスター)などを使用しましょう。
絶縁ドライバーは、持ち手部分が絶縁材料で覆われた、電気工事専用の金属製ドライバーです。同様に、電気工事用のハンマーやスパナなどの工具は、持ち手がゴムでコーティングされた安全仕様になっています。多くの製品は特徴的な見た目をしていて電気工事用だと認識しやすく、工具の取り間違いなどによるケアレスミスを防止可能です。
デジタルマルチメーター(テスター)は、電圧や電流を測定するための道具であり、作業箇所の通電状態を確認する安全対策に用いられます。
電気工事の現場では、適切な工具・機器を使用して、ときには個人で、ときにはチームで安全を確保することが大切です。
また、電気工事用の工具をメンテナンスも安全管理には欠かせません。作業中に破損すると、破片が電気設備内に落ちたり、人体に刺さったりするおそれがあります。適切に点検をして、作業中のリスクを減らしましょう。
電気工事における事故と対策
電気工事中は、感電などの電気による事故に注意が必要です。ここからは、「感電」「引火爆発」「電気火災」「静電気」の4種類の事故について、対策を含めて解説します。
感電は電気工事中に最も起こりうる事故です。感電を防ぐためには、絶縁保護・作業前の電源遮断・適切な工具の使用・従業員への安全教育が重要になります。
引火爆発は、主に電気設備からの火花や過熱によって引き起こされる事故です。爆発を避けるためには、作業場所の粉塵を最小限に抑えるための工夫や、防爆構造の電気設備の使用が必要になります。
電気火災は、劣化・湿気・腐食などによって絶縁の効果が低下したときに起きやすい事故です。対策としては、絶縁用の工具や資材の定期的なチェック、ショートが起きた際の迅速な電気遮断、可燃物を電気設備から遠ざけておくことなどが挙げられます。
日常生活では多少の痛みを感じる程度の静電気ですが、電気工事においては火災の原因にもなる重大な危険因子です。静電気を防ぐためには、作業前に金属に触れたり、除電器を使用したりして、身体の電気を放電させておくことが有効です。
これらの安全対策を実施することで、電気工事における事故のリスクを大幅に低減できます。
電気工事の安全規制に関する法律
電気工事を安全に行うために、法律によって工事のルールが定められています。たとえば「電気工事士法」と「電気工事業の業務の適正化に関する法律(電気工事業法)」などがあり、違反すると罰則を科されるおそれがあります。
安全に作業を完了するためにも、電気工事士として仕事を続けるためにも、しっかりと把握しておきましょう。
電気工事士法
電気工事士法は、電気工事を行う際の資格要件や電気工事士の責任を規定する法律です。電気工事士のみに認められた工事の範囲などが定められ、工事の技術基準への準拠を義務化しています。
電気工事士には、一般家庭などの工事を行う第二種電気工事士と、より複雑で大規模な工事を扱える第一種電気工事士があります。資格取得のためには、養成施設(自治体や学校法人、一般社団法人などによるもの)などでの受講・受験が必要です。
電気工事業法
電気工事業の業務の適正化に関する法律(電気工事業法)は、工事中の安全確保を目的とした、電気工事業者に対する規制などを定めた法律です。電気工事業者の登録制度や、安全管理を担う主任電気工事士の配置義務などが定められています。
また、業務における規制や義務、たとえば事業所の標識掲示や検査機器の準備なども、電気工事業法によって規定されています。
まとめ
電気工事では、適切な安全対策が必要です。この記事では、事故を避けるための服装や工具の選び方について解説しました。
また、感電・電気火災・静電気など、電気による潜在的な危険に対する予防措置についても紹介しました。
この記事で紹介した対策を実践すれば、電気工事をより安全に進められます。