毎日当たり前に消費している電気ですが、建物内で活用するためには、電気を建物内に供給する必要があります。供給するためには、電気の「引き込み工事」が必須です。
今回の記事では、電気工事の1つ「引き込み工事」に注目します。引き込み方法を4つに分けて紹介しますのでご一読ください。
引き込み工事とは?
電気工事にはいろいろな工事内容がありますが、引き込み工事とはどのような施工内容でしょうか。
電気はそもそも発電をさせることによって生まれます。磁石とコイルを使い、電気を発生させる仕組みです。
例として、火力発電の場合には電力会社の施設で石炭などを燃やして、水を沸騰させたうえで蒸気を発生させ、蒸気の生み出すパワーでタービンを回して発電機に動力を与えています。
太陽光発電の場合は半導体に光が当たると電気が生まれる現象を生かしています。しかし、このままでは家庭や工場などの施設に電気は届きません。
そこで、建物を施工するなどの際には、引き込み工事を実施しています。建物内に引き込む際には電線から電気を引き込んでいます。
引き込み工事を依頼するには
電気工事はほとんどのケースで、電気工事士と呼ばれる国家資格が無ければ施工することができません。電線から建物へ電気を引き込む際も、感電リスクなどに備えた装備で工事を行う必要があり、電気工事士に依頼が必須です。
安全に建物内の設備に電気を供給するためにも、電気を使いたい建物があったら引き込み工事を電気工事士(もしくは電気工事業者)に依頼してください。
なお、引き込み工事は建物内の配線工事とは異なり、施工希望者と電気工事業者の間で日程が調整できれば、すぐに工事できるものではありません。事前に引き込み工事を申請する必要があり、数か月前から準備を進める必要があります。
新築時には引き込み工事の手配なども含めて施工を請け負った側が手配しています。しかし、車庫や廃屋の活用などで電気を使用したい場合には、ご自身でまずは電気工事業者に相談し、引き込み工事を依頼しましょう。
引き込み工事の施工とは|4つの方法を解説
この章では、具体的に引き込み工事の施工方法について解説します。施工方法は大きく4つに分類できます。以下ご参照ください。
1.単相3線式とは
一般的な住まいや小規模のテナント、アパートなどに行われるポピュラーな引き込み工事が「単相3線式」と呼ばれるものです。この方法は3本が1組となっている芯線を引き込むことで電力を供給させる工事で、3本の線にはいずれも「100V」が流れています。最大で200Vの電圧が使用できるようになりますが、100Vの電圧を選択することも可能です。
一般的な住まいは一見すると電力消費は低く見えるかもしれませんが、エアコンなどの稼働が多く、200Vを選択するケースが多くなっています。小型のテナントやオフィスの場合には、OA機器を稼働する必要があり、200Vが選択されています。
2.単相2線式とは
家電製品が広く普及し、3線式がポピュラーな工事になるまでは、一般的に「単相2線式」の工事方法が広く利用されていました。こちらは芯線が3本ではなく2本に留まっており、いずれにも100Vの電圧が通っています。3線式と比較すると心細いように見えますが、決してそうではありません。日本では低圧の環境整備は今も一般的であり、安全で安定して電力が供給されています。
電力事情が不安定な国も多いですが、日本では安全性の高い家電製品も多く、世帯人数が限られているコンパクトなお住まいなら、100Vでも十分でしょう。単身世帯を想定しているアパート(30アンペア以下契約)の場合も単相2線式が導入されています。
3.高圧引き込み
ビルやマンション、大型の商業施設や工場などでは多くの電力を消費する設備が並んでおり、単相式の小さな引き込み工事では追い付きません。そこで、行われている工事が「高圧引き込み」です。
この工事は低圧電力では成り立たない施設向けに、高圧電力を引き込むために行われます。電圧が大きいということはそれだけ、リスクも大きくなるため慎重に行う必要がある電気工事です。
高圧電力は建物内部に配線を引き込んで使うのではなく、変電できる設備に電圧を調整して引き込みます。大型の建物やマンション施設には、敷地内にボックス型の設備が置かれていることがあります。
このボックスに「変電設備」を書かれていたら、高圧電力の引き込みが行われた箇所です。配線が張り巡らされておらず、ボックスだけが置かれているのは、地中を経由して引き込みが行われているからです。
うっかり高圧電力に触れてしまったら、感電死してしまう可能性があるため地中を経由して行われています。(なお、このボックスはキュービクルなどの名称で呼ばれています)
4.三相3線式とは
最後に紹介する「三相3線式」は3本でワンペアとなっている芯線を引き込む工事のことを意味します。先に紹介した単相式の場合は1本につき100Vが流れていると解説しました。
一方、この三相式の場合は1本に月200Ⅴが流れています。高い電圧が1本単位で得られるしくみです。この電気工事は業務用に行われている工事で、業務量エアコンやエレベーターの稼働などに活用されています。つまり、大型の施設向けの電気工事の1つです。コンパクトなテナント程度なら単相2線式で稼働できます。
三相3線式工事は法律上やや使いにくさが残される電気工事のため、基本的に現在は単相2線式や高圧の引き込みで行われることが多くなっています。
引き込み工事における注意点とは
電力を安全に建物内で使用するためには、適正な引き込み工事を行う必要があります。引き込み工事には以下に挙げる注意点もあるため、事前に把握しておきましょう。
引き込み線の長さには限度がある
建物内に配線をする際、「引き込み線」と呼ばれるアイテムを使います。他国の電気工事では、この引き込み線が電柱から建物内に垂れ下がるように活用されていることがあります。
しかし、垂れ下がってしまうと車両や歩行者が接触してしまい、大変危険です。そのため、日本では引き込み線の長さは「40メートル」まで、という原則が設けられています。近くに引き込みやすい電線がない場合などは、相談を重ねる必要があるでしょう。
引き込み工事には申請が必要
文中にすでに既出ですが、電気工事の中でも引き込みに関する作業は事前に申請が必要です。電気使用申込書などを電力会社に提出する必要があります。申し込めば即日で引き込み工事が行われるわけではないのでご注意ください。
まとめ
この記事では、電気工事の中でも建物に電気を吹き込むために欠かせない「引き込み工事」について詳しく解説を行いました。
電気工事は電気工事士に依頼をすることが重要ですが、特に引き込み工事は申請という事前準備が欠かせない工事です。必要の際は早めに依頼をしましょう。